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小林よしのり
2014.1.14 05:00

尖閣と靖国と米国

朝日新聞が「尖閣と米国」という記事を載せている。
野田首相のとき、クリントン米国務長官が
本当に尖閣国有化は必要なのか?」と迫ったらしい。
今回の安倍首相の靖国参拝の深刻さの原因は、
まさにこの「尖閣国有化」にある。

わしも石原慎太郎が都有化すると宣言したとき
喜んでしまったが、あれは単純すぎた。
その後の「寄付金ナショナリズム」でようやく目が覚めて、
カネで領土は買えないぞ!」と警告し始めたが、
時すでに遅し、中国のナショナリズムに火をつけ、
国有化によって日中は一触即発の状態に陥った。

寄付金はまったくの無駄だった。
安易なナショナリズムが戦争への道を開いた例として、
将来、歴史教科書に記載されるかもしれない。
寄付金は未だに宙に浮いたままだ。

あの時、都有化していたら、タカ派の日本人が
どんどん上陸し始めて、もっと危なかったから、
野田首相の国有化は已むを得ない処置だっただろう。

今や尖閣を巡る危険な状態の中で、
安倍首相の靖国参拝が強行されたのだから、
中国は「尖閣」と「靖國」のダブルパンチで
面子を潰された。

バイデン米副大統領は安倍首相にこう言ったという。
「意図した衝突よりひどいのはただ一つ、
意図しない衝突だ」
これが米国の戦争に対する哲学であり、
安倍首相にも、日本の自称保守派にも、
この警戒感が微塵もない。

アメリカに守ってもらえるという依存心が、
戦争への警戒心を育てないのだ。
これこそが「平和ボケ」の代表例であろう。

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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